北へ
北へ
アラスカ。
地球に残された、最後の大陸。
この北の大地へ行こうと思ったのは、一体なぜだろう。
人を拒む、太古の昔の神話の世界へ、憧れを抱いたのは一体なぜだろう。
20歳を迎えたわたしが、地球に出逢う旅にでるのは、一体なぜなんだろう。
マイナス40度を下回る世界に、わたしたちと同じ顔を持つ人々が生きている。
不思議でしかたがない。
なぜ彼らは、北を選んだのか。
アジアの分かれ目で、彼らはなぜ、北を選んだのか。
わたしたち日本人の祖先は、太陽の光溢れる南に進んだ。四季に触れ、暖かい土を抱き、日の丸を仰ぐことを選んだ。効率を求め、人類の知能に挑むことを決めた。
しかし、エスキモーの人々は、北へ進んだのだ。
生命を拒む極寒、暗闇に覆われた空、生きるための戦いを選んだ。
そしてそこに生まれる、神話の世界を選んだ。
生きることに挑む世界に、飛び込むことを決めた。
なぜだろう。
同じモンゴロイドの血を持って、この二つの世界は、なぜこうも違うのだろう。
貨幣にかじりつき、時間に支配される南。
精霊の中で、太古の川が今も流れる北。
この二つの世界は、どうしてこうも違うのだろう。
わたしは、そのわけを見つけに行く。
二つの世界の根端にあるものを、探しに行く。
地球が眺めた景色に、出会いに行く。
そう、北へ。