渡る人々。
"And I am from JAPAN"
そう言った途端に
ほお、
とちょっと驚いた感じの顔。
これを目にするのが、
なんだか
面白おかしい。
はるか昔
まだ
" GREAT SPIRIT"が
この地に生きていた頃。
ユーラシア大陸から、
暖かい風の吹く南ではなく
北海道を通り抜け
この
オーロラが降る大地を
選んだ人々。
黒いゆらりとした髪に
アジアを感じる優しげな瞳。
Alaska Nativeの人々の顔は
やはりどこか
懐かしいと思ってしまうものを持っているのです。
この間、Alaska Native Danceの授業で
アラスカ先住民の人々の
ポットラック(持ち寄りパーティ)へ、
踊りを披露しに
月夜の下をぞろぞろ。
深いシワを刻んだ笑顔と
そしていろんなものを映して来た瞳を
私たちに向ける長老たち。
自分のルーツはそっちのけに
サーモンをしゃぶる子どもたち。
そんな人たちの前で、
みんな恥ずかしげに自己紹介。
私があえて、
日本人ということを言わないと
"where are you from?"と
村の名前を聞かれます。
日本だよ、というと
へえ?っと驚かれるのが好き。
東京からはるか北。
世界の向こう側にいるのに
ここにいると懐かしい気持ちになるのは
どこかで
同じ血が通っているからかもしれません。
南を選んで科学を夢見た日本人と
北を選んで神話を持ったアラスカの人々。
その気が遠くなるような歳月の向こうで
一つだった時があるのでしょうか。
私たちが
恥ずかしげに
アザラシ狩りの踊りを踊っていたら
後ろで
太鼓を叩いていたおじいさんが
我慢できないとでもいうように
いきなり前に飛び出して来ました。
そして、
ホールに響き渡るような足踏みで
まるで
何かが、それこそ
何かが宿ったかのように
踊り出しました。
その、小さな、
背中に
彼らが辿って来た
壮大な歴史が見えました。
命が
地面の底から
めらめらと湧き上がってくるような舞。
アザラシの革靴に
青い衣をまとって
ただ一心に舞う老人の姿。
生きるとは、こういうことだ。
そう
言われた気がします。