ピアスの門出

お気に入りのピアスをなくしてしまった。

 

猫のシルエットに、真珠みたいなビーズが連なったピアス。

淡い恋の思い出がぎゅっと詰まったピアス。

二人の大事な瞬間に、いつも耳もとで揺れていたピアス。

 

散歩中に通った坂、立ち寄ったスーパー、お茶をした珈琲店...

あちこち探し回ったけど、どこにも見つからなかった。

 

「持ち主に似て、旅に出たくなったのさ。今頃はきっと日本海に出てるよ」

 

そうやって言ってくれたけど...。

旅に出てしまったのか。

私の耳もとから離れた、遠い場所に。

 

がっくり肩を落として、

昨日の珈琲屋さんに戻ってくる。

憂鬱な気分を、雨雲が追い立ててくる。

 

頼もうとしたバニラソフトクリームは、

テイクアウト限定だった。

じゃあ、テイクアウトして外で食べます。なんて今更いう元気もなくて

ココアを頼んだ。

普段ならカロリーやらなんやら気にするけど

今日はもういいや。

 

運ばれてきたのは

しゅわしゅわとホイップクリームの弾ける音がする

冷んやりしたココアだった。

私のどんよりした心には似合わないほど、可愛らしい女の子みたいな甘いココア。

 

ダークブラウンと可憐なクリームの白が混じり合う

このとっぷりとした色の中に、ちょっと沈んでいよう。

 

そして、門出を祝ってやろうじゃない。

新しい世界に飛び出して行った、ピアスの門出を。

自分の宿命を捨てて耳もとを離れて行った、私のピアスの門出を。

 

ゆっくり味わうつもりが

結局氷が半分も溶けきらないうちに、飲み干してしまった。

 

そんな日が、あってもいいよね。

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気まぐれ

なんか語れることしたいな。

ついでに生きる力つけたいな。

なんて軽い気持ちで大学をひょっこり休学し、やってきた北海道。

 

そこで

ほんとに好きになった人と結婚しちゃいました。

 

コロナやら時代柄うんとこさっとこ、

なんとか始まった新婚生活というもの。

 

家計簿つけたり栄養バランス考えておべんとう詰めたり

安いスーパーを探して歩きまくったり

旦那さんの帰りをワクワク待ってみたり

この幸せって慣れちゃうものなのかなって寂しくなってみたり。

 

生きるってことはなんとも気まぐれか。

 

それでも、今日良ければいいや。

明日も

明日になれば今日になる。

その繰り返しでとりあえずやってみよう。

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あかあおきいろをぎゅっと詰めるといいんだとか。

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ものづくり力ある奴だった。

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みんなが見上げてるからつられて仰いだらひこうきぐも。





そんな21歳の朝。

 

 

アラスカ ユーコン川のほとりで教えてくれたこと   エバリーンという女性


   ”Smile. Smile. That helps”


 どんなに辛いことがあっても、笑うのよ。
それは、悲しみに溢れた心を照らす、太陽になるから。

 

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笑顔の向こうを、歴史が駆けてゆく

 


世界の始まりが

そのまま時を止めたかのような光景が

小さなプロペラ機の向こうに広がっていた。

 

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人類最後の未踏の地、アラスカ。

 

人間を拒むことも

受け入れることもせず

ただそこに在り続ける偉大な山々。

 

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世界の始まり。

アラスカの小さな町

フェアバンクスから

木の葉のように舞い上がったプロペラ機で

辿り着いたのは

Ruby

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google mapより

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手紙に新聞、そして食料と人を乗せて。

 

かつて西洋の人々が

一攫千金を夢見て開拓したものの

今はアラスカ先住民である アサバスカン族の子孫たちが

たった100人ほど暮らしている

まさに世界の終着点のような村だ。

 

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そこには、氷に覆われた大河が。

-30℃という

肺も脳みそも凍りつくような

隔絶された世界で出逢った人々は

どこか遠い歴史の一箇所で

同じ祖先を思わせる

モンゴロイド系の顔をしている。

 

人生とは

大河のようなものだ。

しかし

どんな川の流れのいたずらなのだろう。

 

この世界の果てのような

闇と雪、そして底なしの大地に覆われた場所で

迎え入れてくれたのは

EvelynとEdという老夫婦だった。

 

白い肌を持ちながら

この村の長のような地位を持ち

マリファナとエイリアンをこよなく愛するエド

 

ネイティブアメリカンの血を継き

男勝りのクレイジーさとともに

ビーズ一粒一粒を

美しい刺繍に変えてしまう繊細な手を持ったエバリーン。

 

東京で生まれ育った日本人と

この老夫妻が

ある大河の一点で混じり合った時

一体世界に向けて

何を叫べばいいのだろう?

 

 

夕闇の向こうに

あっという間に走り去ったある一晩だった。

 

エド

小さな薪ストーブの前で奏でる

不思議なまでに懐かしいハーモニカの音色を聴いていると

ほろりと出てきた言葉。

 

「ねえエバリーン。幸せってなんだと思う?」

 

横で刺繍をするエバリーンを

じっと見つめた。

 

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夕闇が迫る。

彼女は

ちょっと不思議そうな顔で

おかっぱ頭の日本人を見返す。

 

でも

その麻色の頰に

砂漠を生き抜いたネイティブアメリカンの偉大な笑みが

ゆっくりゆっくり浮かんだ。

 

その悪戯っぽい少女のような

ブラウンの大きな瞳をキラッとさせる。

 

そして

考えながら、やんわりと彼女は言った。

 

Happiness is not be given by somebody or something.

Happiness is what you generate.

Happiness is what you have already had within. 

幸せってのは

与えられるものじゃなくて、もう自分の中にあるものなんだよ。

ただ悲しみや苦しみに包まれて、

見えなくなってるだけで。

 

 

どこか遠くの世界を見つめながら

語ってくれた

エバリーンという、一本の大河の物語。

 

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アメリカ本土の

インディアン保護地区で生まれた彼女。

ネイティブアメリカンの女子として学んだ

手芸に料理、そして大地との生き方。


悲しい過去。

忘れられない苦しみ。
そして出会った夫エドとの人生の旅。


カナダとアラスカのハイウェイを、お腹に赤ちゃんを抱えながらヒッチハイクで旅し、見た数えきれない美しい自然のこと。

オンボロのトラックの旅。
警察から隠れながら、森の中で生んだ子どもの話。
インディアンである自分のアイデンティティ

クリスチャンと昔ながらの伝統のバランス。

血を流れる歴史と、瞳に宿る未来のこと。

悩んだ自分自身の存在意義。
自分を殺そうとした過去。
自分の中に潜む悪を殺そうとした過去。
それでも、消せないと悟った過去。
なぜなら、どの自分も、どの一瞬も自分だったから。

 


「どうして、私が苦しむの。
望んでも、許してもいない悲しみが私を支配するのはなぜなの。

そう苦しんだこともあったよ。
でも、悟ったの。幸せは、誰かに与えられるものじゃない。

自分自身に潜んでいるものだって。

だから、幸せになれないと思った時。思い出すの。

大事なのは、選択だってこと」

 

Choice is the only right given to us.

Every moment is made by your own choice.

私たちに与えられた唯一の権利は、選ぶ、ということ。

人生のどの瞬間も、

自分の選択によって創られるの。

 

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幸せになることも悲しくなることも

全てはあなたが選んでること。

 

いつの間にか、

エバリーンの大きな瞳には

涙が浮かんでいた。

 

そこには

ネイティブアメリカンとして生まれ

白人の社会で生き

アラスカ先住民の地に根を下ろした一人の女性の

壮大なドラマが一コマずつ

再生されているようだった。

 

エバリーンはこうも言った。

 

 

You cannot ignore your sadness. You shouldn’t. You recognize it, accept it,

and move on.

誰も悲しみを、無視することはできないの。

するべきではないんだよ。

だから悲しみを見つめて、受け入れて、そしてまた

歩いていけばいいの。

 


「世の中には、辛いこと、悲しいこと、たくさんある。

テレビを見れば、また耐えられないようなニュースが溢れてる。でも、全部に涙を流すこと、しなくてもいいんだよ。

Ok I’m done with it. もうたくさん!

そういって前に進んで行けばいいの。

それでも悲しくてたまらない時?

Smile. Smile. That helps. 笑って、笑うのよ。それでマシになってくから!」

 

彼女の声には何かが宿っているようだった。

彼女の生き様を語る

何かが。

 

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Forgive yourself.
People make mistakes. People make mistakes. But you have to make mistakes to grow…you know…so you have to forgive yourself.

もう一つ教えることがあるよ。

自分を赦しなさい。

人は間違いを犯すけど、それで育っていくものだから...。

だからね、自分を赦しなさい。

 

エバリーンはここまで語ると

こちらをまっすぐ見つめ、そして明日を夢見るように言った。

 

「ああ。若い時に知っていればよかったっていうことが、沢山ある!

みんな誰でもそう思うんだよ。でもね、過去を悔やんでも仕方ないの。あなたは前にしか進むことができないんだからね」

 


そして彼女は

ニッコリと笑う。

アラスカの冬の夜の、焚き火とマリファナ

ほろ苦い空気を思い切り吸い込んで。

 
どこか遠く、

地平線の向こうの見えざるものを見つめながら語ってくれた

彼女の人生の物語。

 

そして、その旅はまだ終わってないわ。という。

私の人生の冒険は、まだ終わってない。

これからもずっと

続いていくのだと。

 

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自分の歩いた土地を指すエバリーン



「あなたは愛されてる。幸せなんだよ。
ただ、気付かなくちゃ、自分で生み出さなきゃいけないの」



大きなくっきりした瞳に涙をためながら、
教えてくれた。命の旅。


20年間全く

会うことも話すこともなかった

世界の果てに生きる、一人の女性の人生の物語。

私の人生の大河に加わった、一本の不思議な流れ。

 

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二人の手には、大好きなマリファナ

 


マリファナをプカプカ吸って、夫婦仲良く咳き込んだり、吐いたり、楽しそうに笑い合ったり。

 

アラスカの夜は長い。

 

けれど二人の間に流れる大河は

静かに深く、そしてどこか切なさの混じる

あたたかな色をしていた。

 

せは与えられるものではない。
すでに持っていて、自分で気づいていくもの。

                                    Evelyn Sarten 

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姉弟喧嘩に勝つために、私は旅に出る。

姉弟喧嘩に勝つために、
       早稲女は旅に出る。

2019年10月〜2020年の10月までの1年間
早稲田を休学します!
(正式に許可が下りたのはまだ2020年3月末までですが‥)

国教の事務所におずおず、
描きかけでツッコミどころに溢れた計画書と、とにかく世界に飛び出したいんじゃ!人に出逢いに行きたいんじゃ!!云々を書きまくった志望理由書を出しに行ってから2ヶ月。

workawayという
世界中のホストファミリー
      +
     衣食住
      +
   労働力と経験

をマッチングさせる団体を利用して、中央アジアはモンゴルから、ヨーロッパ、南米、北米などの国々を渡り歩きます。
半年間は資金集め。要するにバイト。
バイト三昧。
残りの半年間で渡航予定。

https://www.workaway.info/

姉弟喧嘩に勝つために、早稲女は
旅に出ることに決めました。

自分語りになってしまいますが、
そうしないと多分、途中で挫けたくなるから。

I've officially got the permission to take a year off from Waseda University.
10/2019-10/2020.
My journey will start from Central Asia to all over the world up to Iceland(Probably.)
I'm gonna be working to make money for half a year and then off to the world.
Using Workaway, the organization that provide us fair exchange and friendship as well as volunteering and work opportunities.

Hoping to find what does "happiness" mean to people around the world.

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    姉弟喧嘩に勝つために、
        早稲女は旅に出る。

兄弟喧嘩といえば、

リモコンの取り合いから
トイレの順番から
ごみ捨ての譲り合いから
そんなもんから始まるものだ。

兄弟喧嘩といえば、

姉が知識で弟を論破するか
兄が力で弟をねじ伏せるか
妹が母の援軍をゲットするか
そんなもんで終わるものだ。

でも
私たちのあの喧嘩だけは、違った。

早稲田現役合格の
18歳の私は
サッカーに明け暮れる12歳の弟に
知識でも、語彙力でも
他の何を駆使してでも勝てなかった。

「幸せって何か」

こんな
ありふれた道徳のテーマみたいな
青春かぶれの詩人みたいな
どっかの国の格言みたいな
こんなことが、
こんなことが、
私たちの喧嘩の争点だった。

色んなことが
当時の我が家では起こってた。

ドラマみたいな
映画みたいな
「そんなことある笑???」
って突っ込みたくなるごちゃごちゃが
当時の我が家では散乱してた。

沢山のことが
静かに
でも確実に我が家に押し寄せていた。

同時に、今までの色んなことが
腑に落ちた。

お母さんが
自分の服を買わない理由
これだったんだなぁ。

わーっと何かが爆発したあとの
蒸し暑い夜だったと思う。

中国の砂漠に羽ばたいた
一匹の蝶の起こした風が、
太平洋を越えて
アメリカの大地に嵐を起こすことがある、
と聞いたことがあるけれど。

それと同じように
ほんの些細な一言が

あの日家族の中に
嵐を引き起こした。

どっからそんな話になったのか
今はもう思い出せない。

ただ、
弟も私も
叫んでいた。

お互いを
めちゃくちゃに傷つけようって
そう思ったのか?

家の中のことが
悔しくてたまらなくなったのか?

そんな中でも
まっすぐ育ててくれた両親への
愛情の裏返しだったのか?

とにかく私達は
多摩丘陵に響き渡るような声で怒鳴ってた。

「幸せって何なんだ」
ってくさいこと。

私は
愛だと思ってた。もちろん愛だって。

服が中古だ?家が小さい?
そんなん関係ないよ。
家族の中に愛がありゃあ幸せじゃん。
愛があるから幸せなんじゃん。
だから
ロミオとジュリエット
自殺までしたんじゃん。

だから私達も
今までやってこれたんじゃん。

でも弟は違うって、言い張った。

幸せを作れるのは
お金だって言い張った。

一見めちゃめちゃダメ男みたいだって
思えるかもしれないけど。

でも今思えば
一番筋が通ってて、
弟だから言えることだったのかも。

お金がなきゃ
どんなに素敵でも愛せない。
お金がなきゃ
どんな大事な人でも守れない。
お金がなきゃ
心からは幸せになれない。

一円単位で切り詰めて、
何を見ても値段の話になる心で
真帆は幸せになれる?

7人に1人は
日本の子どもも貧困層にいるんですよーって
偉そうに言う誰かの前で
真帆は幸せになれる?

お金は人を変えんだよ。

あー
論破できなかった。

あんなに赤本解きまくって
古文で昔の人の感情深読みしまくって
現代文で人の心情を察しまくったのに

何も言えなかったんだなぁ。私。

中一のサッカーかぶれの弟に
喧嘩で惨敗した。

それから私は、
幸せが何なのかわからなくなった。

誰かが決めた幸せの定義に
自分が当てはまらないことを恐れた。

幸せって何なんだろう。

それから3年間
あっため続けてた一つの夢。

大学生の1年を
そのぐしゃぐしゃの夢に
賭けてみることに決めた。

早稲田を休学して
色んな人に逢いに行こう。

アラスカで出会った
workawayを通して
まだ見ぬ土地を歩こう。

世界の遥か向こうで
私と同じように
1日を迎え、終えてゆく、
自分で行かなければ
一生知り得ることはないであろう人々に
出逢いに行こう。

彼らと同じ夕焼けを見、
同じ土を踏み、
同じ汗を流そう。

彼らの語る物語を聴こう。
彼らの人生の川を見よう。

そして聞くのだ。
幸せって何か。

地位も名誉もない、今だからこそ。
喧嘩に勝つために
まずは自分を試してみよう。

幸せの定義を探すことを
笑う人もいれば、心配してくれる人もいた。

幸せは定義するものじゃないとも
大事なことを教えてくれる人もいた。

そうだとしても。
それでも。

どんな答えが出たっていい。
答えが出ないことが答えだったとしてもいい。

学生という
地位も名誉も肩書もない今だから

将来の生き方を選び始めた今だから

無知で荒削りで、そしてどこまでも
自分を知りたいと思える今だからこそ。

姉弟喧嘩に勝つために
私は旅に出たい。

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世界の片隅で見つけた
「幸せ」の物語は、
Facebookを通してみなさんとシェアさせてください。
そして、皆さんの幸せについても
ぜひ聞かせてほしいな、と✿

去年のNO

"NO" 

 

去年の冬、どこかにとりあえずいきたくて

アラスカというものをとにかく見てみたくて

他の国を飛び回る仲間たちをみて焦って

 

めちゃくちゃに

アラスカネイティブの友人たちに

がむしゃらにメールを送ったことがあった。

 

「ねえこんにちは。あのさ、あなたの村に行かせてほしいんだけど!」

 

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スティーブ・ジョブズ

Stay Hungry!!!

の言葉だけが胸に燃えていて

とにかく必死にメールを打っていた。

 

でも、

返ってきた返事はみんな

遠回しに優しく、しかしはっきりした

Noだった。

なんでだろう。

星野道夫はすんなりOKをもらったのに。

ティーブの名言を実行したつもりなのに。

 

思いのままに書いたメールの文章が

恥ずかしくなるほど

きっぱりした彼らの No に

あの時は

落ち込んだ。

 

でもそれから

お皿を洗いながらゆっくり考えたら

そうか

失礼なことだったんだと

ふっと気づいた。

 

ステイハングリーなんてこっちの一方的な熱で

異文化理解なんていうのはこっちの一方的なお門違いで

なんでもいいからやらせてほしいというのは

こっちの一方的なわがままだったんだ。

 

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自分のやりたいことをやるために

人の目なんて気にするな。

自分を貫け!

そんな言葉が私は好きだった。

 

今でも

それは大切な言葉で

その言葉が

世の中の偉大な人物をたくさん後押ししたのだろうと

それは思っている。

 

でも

私の冷たい画面の中の NO のこの文字は

私が

靴紐を結びもせずに

彼らの世界に踏み込もうとしていた無礼さと

子どもらしさと

そして必死さを

静かに語っていた。

 

アラスカ先住民の人々の

あの歌い方を

あの空の見つめ方を

あの微笑み方を

 

知りたいと思っていたはずだけど

実はそれは

ただ自分を満足させたいだけだったと

彼らは見透かしていたのかもしれない。

 

ああ

別の時の流れを生きる

お前の隣の者の物語。

知りたいのならば

待たなければいけないのだよ。

 

そう

諭されている気がした。

 

靴紐をしっかり結んで

しゃんと前を向きなさい。

嘘のない真っ直ぐな目で

前を向きなさい。

それから

相手がお前を見つめるまで

待たなければいけない時が

この世にはあるんだよと。

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はるか向こうに、北米最高峰

 

そうか。

別の世界を生きてきた

隣の君をわかるには

いや、その世界に入れてもらうには

待たなくちゃいけなかったのか。

 

お皿についた泡が

すっかり消えた頃

私はそう気づいた。

 

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そして今日。

普段は

おはようどころか

目を合わせてくれるかどうかも微妙。

私のことが

見えてるんだかどうかすらわからなかった

アラスカネイティブの仲間たちが

 

はるか向こうにのぞむデナリを前に

海のような底なしの空と

夏のような日差しの下で

力いっぱい歌いながら

私の横で

アラスカネイティブダンスを踊っていた。

 

ここを去る前に

もう一度だけ踊りたいからと

真っ直ぐな声に集まってくれたのだ。

 

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アザラシ漁の歌を

吹き抜ける風に消されぬように歌う彼らの後ろに

私が知りたくてたまらなかった

何万年の歴史が

そっと顔をのぞかせた気がした。

 

そして

あの独特の訛りと

あのシャイでたまらない目を私に向けながら

静かにつぶやいた。

 

"Alaska is always a home for you." 

 

アラスカのツンドラを駆け抜ける風に

持っていかれそうな

たった一言。

 

でもこの一言を聞きたくて

私は何ヶ月も待っていた気がする。

 

"You are our sister to us all..."

 

目すら合わせたことなかった彼が

ちらっと私をみてはにかんで言ったこの一言は

多分一生

静かに私の心の中で

燃えているんだろう。

 

去年のNOが

アラスカ山脈のはるか向こう側へ

走り去っていくのが

一瞬見えた気がした。

 

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Quyana 

 

追伸*

その後

キャンパスの森の中に

鳥たちが帰ってきた話になった。

 

へえ、

写真撮りに行こうかな

なんて

スマホを取り出した私の横で

 

「あいつら、うまいよなあ...」

 

と緩んだ顔を見て

私とかれらの中にある

まだまだ大きな流れの違いを感じた。

 

そしてなんだか

可笑しいやらなんやらで

吹き出してしまう。

 

かれらにとってあの鳥たちは

撃ちとってスープに入れる

絶品のご馳走なのだ。

 

 

 

 

渡り鳥 帰る。

なんだか騒がしいと思ったら

南の空の向こうから

渡り鳥の隊列。

 

三角形を綺麗に描きながら

アラスカの空へ帰ってきた彼らを見て

どうしようもなく

何かが込み上げてくるのは

なぜだろう。

 

いや、何も自分は感じていなかったかもしれない。

何か感じたと思いたかっただけかもしれない。

 

でも

渡り鳥が

帰ってきたことは確か。

 

時は確実に

流れていっている。

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8月に見たよ、君。



 

この道が馬場に戻っても。

朝3時。

むっくりと起きだして

ヘッドランプと手袋を手に

しんと静まり返った森に入っていく日本人2名。

 

ふくろうのおしゃべりを

こっそり盗み聞きしに

いざ

10キロ3時間のアラスカ流朝活。

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誰もいないけど、何かいる。

誰もいないのに

何かいる気がしてなんども後ろを振り返る。

 

息を殺した森と

はるか向こうの星空の

深い静寂の中に

何か壮大な音楽が聞こえてくるのは

多分アラスカの味なんでしょう。

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じんわりと太陽のお出まし。

誰もいないけど

何かいる。

 

静かだけど

声がする。

 

そんな朝4時。

 

ふくろうの鳴き声の向こうに

車が走る音を聞いて

なぜかホッとしてしまうのは

多分私が人間だから。

 

(朝の4時に森から

ぬっくり出てきたアジア人を見たあのおじさんは

きっとマフィアだと思っただろうな)

 

世界のどんなところにいても

人間というのは

同じようなことで悩んで

悔しがって

泣いたりしながら

 

今日もまた

ぐいっと靴紐を結んで

今日を生きていこうとするんだなあ。

 

泥沼にはまりながら思う。

 

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朝5時。どこかから文明の香り。

この道が

高田馬場

あの人間くさい道に戻っても。

 

私はまたこうして

靴紐をぐいと

結べる人間でありたいなあ。

 

あと

1ヶ月。

帰ったら

馬場のあのお店を覗こう。

あの音楽を聴こう。

あの空気を吸おう。

あの人と笑おう。

 

なーんてにやけながら

日を数えてる朝でありました。

 

この真っ暗な森の小道が

馬場のあぜ道に戻っても

いろんな世界の時間の流れを

持ってる人間でありたいなあ。

 

と思ってたら

また泥沼にはまった朝でありました。

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地球は今日も回りました。