この道が馬場に戻っても。
朝3時。
むっくりと起きだして
ヘッドランプと手袋を手に
しんと静まり返った森に入っていく日本人2名。
ふくろうのおしゃべりを
こっそり盗み聞きしに
いざ
10キロ3時間のアラスカ流朝活。
誰もいないのに
何かいる気がしてなんども後ろを振り返る。
息を殺した森と
はるか向こうの星空の
深い静寂の中に
何か壮大な音楽が聞こえてくるのは
多分アラスカの味なんでしょう。
誰もいないけど
何かいる。
静かだけど
声がする。
そんな朝4時。
ふくろうの鳴き声の向こうに
車が走る音を聞いて
なぜかホッとしてしまうのは
多分私が人間だから。
(朝の4時に森から
ぬっくり出てきたアジア人を見たあのおじさんは
きっとマフィアだと思っただろうな)
世界のどんなところにいても
人間というのは
同じようなことで悩んで
悔しがって
泣いたりしながら
今日もまた
ぐいっと靴紐を結んで
今日を生きていこうとするんだなあ。
と
泥沼にはまりながら思う。
この道が
高田馬場の
あの人間くさい道に戻っても。
私はまたこうして
靴紐をぐいと
結べる人間でありたいなあ。
あと
1ヶ月。
帰ったら
馬場のあのお店を覗こう。
あの音楽を聴こう。
あの空気を吸おう。
あの人と笑おう。
なーんてにやけながら
日を数えてる朝でありました。
この真っ暗な森の小道が
馬場のあぜ道に戻っても
いろんな世界の時間の流れを
持ってる人間でありたいなあ。
と思ってたら
また泥沼にはまった朝でありました。