アラスカが好きなわけ。
アラスカが好きなわけ 空港にて
たとえば
それは
”ハンターはご確認を”の看板。
たとえば
それは
”アザラシ用のナイフ持ち込み禁止”の注意書き。
たとえば
それは
空港に溢れる人々の格好。
シアトルに帰っていく人の波と
アラスカに帰っていく人の波。
おしゃれや流行りは二の次で、
ガムブーツに
モコモコのセーター
そして、
しとめた獲物の詰まった箱を
嬉しそうに抱える人たちを見ると
妙に嬉しくなる。
たとえば
それは
造りかけの家。
何もないように見える世界から
とんかちと
釘さえあれば
何かを造ってしまうその度胸。
その奇想天外さに出逢うと
ふいに笑顔がこぼれてしまう。
「みんな逃げてきたのよ。西部のむさくるしさや、南部の堅苦しさから。」
そう友人のお母さんは笑ったけど、
私は
みんな
自分を見つけにきたのだと言いたい。
あったかい太陽や
緩やかな時の流れを捨てて
人間を受け入れるとも見捨てるともしない
この
人間の原点に戻れるような
壮大な自然の中に
自分を見つけにきたのだと言いたい。
地位も名誉もぜーんぶ捨てて
残ったのはこの、ボロトラックと犬だけさ。
たとえば
そう
それは
そんな口笛を吹く
アラスカ人の横顔。