あったかい日。
「ある人のことを無性に考えてしまう時、
そのある人は
苦しみを通り抜けようとしているのだ。
だから、贈り物を与えなさい。
その人が、
苦難を乗り越えられるように。
その人に、
大いなる魂が宿るように。」
挨拶しかしたことのない
エスキモーの彼女が、
"For you, Maho"
と小さな包みを残して
走り去って行ったこと。
彼女の村の長老が
教えてくれたという言い伝えのメモ。
包みの中からこぼれ落ちてきた
アラスカ先住民のお守りと編み物。
それが、
私にとってどれだけ意味があることだったか、
きっと彼女も私もわからない。
ただ、
人というのは、
ただ
単純なのだということ。
それをまた
アラスカのGreat Spiritに
教えられたのだと思う。
単純だなあ。
もう自分って可哀想だ、あーあほんとに
自分の悩みなんて誰もわかっちゃくれない。
あーあ、なんて意味のない一日。
あーあ、なんて恵まれない人生。
あーあ、なんてつまらない自分。
そう言って何かを蹴っ飛ばす。
違うってわかってるのに
わかろうとしない自分に腹が立って。
ダメだって思ってるのに、
言い訳ばかり上手くなってく自分が
嫌いになって。
このまま
一人ぼっちで火星にでも
飛んで行ってしまおうかとひねくれるのに。
かと思ったら、
彼の一言で救われてしまう。
彼女の挨拶に泣いてしまう。
そのあったかさに守られてしまう。
たった一杯の友人の
手作りおかゆで
その一日が輝いてしまう。
単純だなあ。
でもだからこそ、
ありとあらゆる人に逢うんだなあ。
自分じゃ何にもできないからこそ、
ご縁ってものがあるんだなあ。
恥ずかしくて、悔しくて、
ちっぽけなことにコテンパにされすぎて、
世界の端っこで泣き出した時。
いるだろうか。
言葉なく、ただ抱きしめてくれる人。
いるだろうか。
ただ、最後まで何も言わず、そこにいてくれる人。
いるだろうか。
逃げるのか。未来の自分が悲しむぞと、突き放してくれる人。
いるだろうか。
ただあったかい食事と待っていてくれる人。
いるだろうか。
お礼も聞かず、ただ見守ってくれる人。
いるだろうか。
ただのちっぽけでつまらん人生に、
立ち寄ってくれる人。
単純すぎて、
穴ぼこだらけの人間だけど。
だからこそ。
とりあえず、
今日のアラスカは、なんだかあったかかった。